発進 1

 発進は、自動車の運転行動の中でも一番の基本操作になるのですが・・・
意外と、勘違いされている方が多いのも事実です。

 まずAT車での発進ですが・・・これは何も説明はいらないかもしれません。
ただ・・・アクセルペダルを踏んで行く時は、クリープ現象に「追い足して行く」感覚で踏むべきです。
Dレンジにギアが入っていれば、ブレーキペダルを離すだけでAT車は動きますが・・その動きに後からアクセルを踏み足して行く感覚で踏むべきです。
 自動車が動く前にアクセルペダルを踏み込んでしまうと、飛び出すような発進になってしまいます。ですから、アクセルペダルはエンジンの反応を見ながら踏み込む感じです。

 さて・・・それに比べると、MT車の発進は・・・結構・・・難しい所が有るかもしれません?

何故か?? まず、エンジンは燃料を燃焼させる力で動いています。この燃焼している力を、動きに変えると言うのが・・・なかなか難しいところがあるのです。と言うのは・・・燃料単体が燃える力と言うものは、どんな時も基本的には同じなのです。
 たとえば、2000ccのエンジンが一回転する時の燃料が燃える力は、1分間に1000回転で回っている時も、10000回転で回っている時も、燃料が燃える力自体はまったく同じなのです。ただ、同一時間の中での仕事量が違うだけなのです。ですから、たくさんアクセルペダルを踏み込んでも、エンジン自体が強い力を生んでいるのではないのです。力の束が多くなっていると考えるべきなのです。
 それでは、実際の発進で注意するべき事は・・・?厄介な事に、燃料が燃える力は・・・0から始まるわけではないのです!電気のモーターなどは、0から動き始めると言えるところがあるのですが・・・燃料を燃やす内燃機関は、エンジン始動と同時にある程度の力がいきなり出る状態になるのです。ですから、エンジンとタイヤを直結状態で作る事は、使い勝手の面から考えると出来ない事なのです。(レーシング・カートなどは、直結状態で作られています!ですから、エンジン始動と同時に走り始めなければなりません!)

 これが理由で、「クラッチ」と言う「力の断続装置」が必要になるのです。
このクラッチの扱いに多少の慣れが必要になるのです。このクラッチ操作をする時の感覚としては・・・「つなぐ」と言う感覚で行なうべきなのです。エンジンとタイヤをつないでゆく操作なのです。ただ単に「ゆっくり動かす」と言う感覚ではダメなのです。つなぐ・・・力を徐々に伝える感覚が必要なのです。たとえば・・・ゆっくり回っている扇風機の羽に、いきなり指を入れたらどうなります?しかし、回っている羽の動きに合わせて指を回せば、回っている羽に指を着けても大丈夫かも?てな感じですかね?ですから、発進する時は元々動いているエンジンと止まっているタイヤをつなげて行く感覚が大切なのです!

 「そう! 発進はクラッチで行なうものなのです!」

では、発進の時にアクセルペダルを踏むのは何のため?

 それは・・・普通の自動車は一旦エンジンを始動させると、アクセルペダルを踏まなくてもエンジンはいくらかの回転数で勝手に回っています。 これを、「アイドリング」とか、「スロー回転」と言います。 何故に、この様な機構にしてあるかと言うと・・・一般の道路上では、いろいろな状況から「停止」していないとならない事が多いのですが・・・その都度、エンジンを止めていたのでは使い勝手が悪すぎます。ですから、停止している時にもアクセルペダルを踏まなくてもエンジンが停止しないようにしてあるのです。(ちなみに、常に全力で走っている事を前提にしている「レーシングマシン」には、この機構は原則として有りません!ですから、ピットの中とか、スタート待ちでは、エンジンを止めないように常にアクセルを踏んでいる必要があるのです。そのアクセルを踏んだり離したりする(バイクの場合は、アクセルグリップを回したり戻したり)ことを「エンジンをレーシングする」とも言います。)ですが、この「アイドリング」の回転は、エンジンが単体で回っているに必要な最小限度の回転数でしかありません。
 ですから、まったくアクセルペダルを踏まないで(つまりは、エンジンの回転数を上げないで)自動車を発進させるのは、エンジンに対して非常に無理があるのです。エンジンが自分自身で回っているのが精一杯のところに、1トンを超える自動車の重さをかける事になるのですから・・・。

 それで、アクセルペダルを踏んで発進となるのですが・・・ここで一つの「落とし穴」があるのです

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