減速と停止 

 速度を落とす事と、停止する事。
これは、速い速度で走る自動車であるからこそ、一番に大切なことです!
 止まれない車に乗る事ほど怖い事はありません!
自動車の運転のプロ中のプロ、「F1ドライバー」ですら、ブレーキのトラブルが起きたら直ぐに走るのをやめます。(エンジンやギアのトラブルなら、ごまかしながら走る場合もありますが・・・)

 でも・・・この減速と停止が・・・実は自動車の運転の中でも特に難しいのです。

 教習の中では、よく「カクン」と止まってしまう方がおられます。
何年も乗っているベテランドライバーの中にも、「カクン」と止まっている方は見かけます。

 この「カクン」と止まると言う現象が出るのは、何故なのか?

 ブレーキの踏み方が強すぎる? 確かにそうかも知れませんが・・・強く踏まないといけない時もあるのです。
 
 「カクン」と止まると・・・指導員はよく、「ブレーキの踏み方が強すぎます。強く踏まないで、何回かに分けて、軽く踏みましょう!」と言います。? 教本にも、その様に書いてあります。

 しかし・・・私はその様には、絶対に言いません! では・・・どの様に言うのか?

 「ブレーキペダルをしっかりと踏んで行って、緩めましょう!」と、言います。

 「カクン」と止まるのは、ブレーキペダルの踏み方が強いのではなく、緩めていないからなのです。
何故なのか?
 それでは、ここで問題です!
「時速100kmで走行している自動車を止めるとしましょう?その自動車は、時速100kmを100mで止められます。では、時速100kmが半分の速度、時速50kmになるのは何mの地点でしょう?」

単純に考えると・・・同じ力でブレーキを踏み続けると、こんな感じで50mの地点で半分の速度の時速50kmになりそうなのですが・・・

 そうでは、ないのです!

 運動エネルギーは、「速度の二乗に比例する」のです。
 だから、半分の速度の時速50kmになるのは・・・全体の距離の4分の3の距離、「75m」の地点に達した時なのです。

 ですから、同じ力でブレーキを踏み続けると・・・速度が落ちるに従って、相対的には「急ブレーキ」になってしまうのです。
こう言う理由で・・・ブレーキ操作としては、速度が落ちるに従って、「緩めてゆく」ことが必要なのです。

 速度が速い時ほど強く踏んで、速度が落ちるに従って緩めてゆくことがスムーズな減速になるのです。

 ですから、ブレーキを緩めて行く(最終的にはMT車の場合は、離してしまう?AT車の場合はクリープ現象が止まるだけの力にまで緩めてしまう。)事が重要なのです!

 しかし、緩める為には「しっかりと強く踏める」ことが必要なのです!
「踏めていないブレーキは、緩められない!」

 「ブレーキは、緩めることでコントロールするのです」

 と・・・言う訳で・・・私は自分自身の教習の中では、常にある程度の速さで走る事を強要します!

 速い速度で練習することの必要性! は、次のとおりです!

@ 車は、「走る道具」です!走る事が当たり前!
A 速い速度の中で、ものを見て考えて、行動する。見る速さ、考える速さを養う為!
B ブレーキを踏む練習の為!

 走らせる事自体は・・・簡単です! 実際の道路へ出れば、誰でも簡単に速い速度になります!
あっ・・と言う間に、制限速度以上に上がってしまいます!
 しかし、場内の練習で速度を出す練習をしていない方は・・・外の道路で、速度は出せるけれど・・・速度を落とすことが出来ない運転になってしまいます! それは、危険です!

 速度をコントロールすると言う事は、速度を落とすと言う事なのです!

それを練習する為には、速度を出さなければ出来ません!
ですから、私は自分自身の教習の中では・・・速い速度で走る事を強要します。

 勿論、初期の段階では多少ふらついたり、危ない状態になったりするかもしれません?
しかし、それは我々指導員がなんとかします! その為に、横の座席に乗っているのですから?
 「最初だからゆっくりと・・・」それでは、練習になりませんよ!

 車は走る道具です。 走らせてこそ本来の動きを出してきます。本来の動きが出てくれば、安定して安全に動いてくれます。しかし、安定して走らせる為には、速度を落とすべき時にはしっかりと減速できる事が重要なのです。その為には、しっかりとブレーキを踏めること!

 しっかりとブレーキが踏めて、いつでも安心して減速できる事がわかれば、走らせることが怖くなくなります。怖くなくなれば何でも出来ます。 (でも、あまりに怖くなくなりすぎても・・危険ですよ!)

 さ〜走りましょう!


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