アコースティック・ギターの弦高調整1

  ギターを弾く時に、弦高(フレットから弦までの高さ)が、あまりにも高いと
 弾き難いものです。また、ハイポジション(ネックのボディー寄り)での音程が
 上手く取れない状態になる場合があります。
 
 ですから、適切な弦高に調整しておくことは非常に重要です。
 今回は、サドルを低くする方法を解説いたします。

 まず、調整に入る前にネックの状態をチェックです。
 ネックに反りは無いか? ネックとボディーの
 ジョイント部分にズレは無いかなどをチェックします。
 弦高を計るゲージを用意します。
 単なる「物差し」でも結構です。中には、十円玉や
 一円玉を使う方もおられます。
 その他、押さえた時の感触だけで行なう方もおら
 れますが・・・。
 私の在籍していた「東海楽器」では、この様な
 ゲージを使っておりました。

 これが、なかなかの優れ物でして・・・
 階段状になっているのですが・・・
 この一段一段を正確に削ってあるのです。
 これを、この様にフレットと弦の間に差し込んで
 間の高さを計るのです。

 計る場所は、基本は12フレットです。

 何故に12フレットなのか・・・
 12フレットは、この
 様な位置にあるの
 です。

 ですから、12フレットの弦高を1mm下げたければ、サドルを2mm低くすれば良いことになります。
 ただし、この場合はネックに極端な「反り」が無い事が前提になります。

 サドルを外す為に、弦を緩めます。

 外してしまっても良いのですが・・・
 トラブル防止の為には、必要以上に触らない!
 と、言うことが基本です。
 東海楽器では、この様に「ラジオペンチ」で
 弾き抜いていました。
 ただし、注意して行なわないと・・・特に、力が入り
 過ぎるとギターの他の部分に傷を付けたり、サド
 ルを割ってしまったりすることがあります。
 特に、「牛骨」製のサドルは割れやすいので注意
 が必要です。

 また、ギターによっては、サドルを接着している場
 合があります。その場合は、接着を緩める作業を
 行なう必要があります。
 サドルが外せたら、欠けや歪みが無いかをチェッ
 クします。
 この時に、重要なのがサドルの底の面です。
 ここの当たり具合は、音に直接影響します。

 いい加減な調整をしたギターの中には、
 斜めに削られている物もあったりします。
 勿論、サドルが入っていたブリッジ側の溝の中も
 要チェックですが・・・なんと、このギターは溝の中
 にプラスティックの薄板を敷いていました!
 
 これは、良くありません! 手抜きですね?

 弦高が低くなった時は、背の高いサドルに交換
 するべきで、この様な事はするべきではありませ
 ん。
 さて、実際にサドルを削る前にサドルの高さを
 計っておきます。
 そして、サドルの上面(弦に当たる方)を削るか?
 サドルの下面(ブリッジに当たる方)を削るかを?
 を決めます。

  私が在籍していた東海楽器では、低級品のギターはサドルの下を削り、高級品のギターはサドルの
 上を削るのを基本としていました。
  これは、低級品には時間を掛けずに・・・高級品には時間をかけて、と言うことでしょうか?

  どちらにもメリット、デメリットが有るのですが・・・

  「下を削る」のは、上面のアール加工が必要ありませんので短い時間で出来ますが、音が変化し易い
 ところがあります。反対に「上を削る」のは、音の変化は少ないですが時間を掛けた丁寧な作業が要求
 されます。

 サドルの上を削る場合は、ブリッジにサドルが埋
 まっている所を鉛筆でケガいておきます。

 これから、どれぐらい削れるか?
 どういう形に削るか?などを決めます。
 と・・・言っても、基本は元の形に合わせて削るの
 が無難なところですが・・・?

  後は、ヤスリやサンドペーパーで削るのが基本
 です。
 最後は上面をコンパウンド等で、ピカピカに磨い
 ておきます。
 
 上面が綺麗に磨かれていないと、調弦する時に
 引っ掛かったりして、合わせ難くなる場合があり
 ます。
  サドルの下面を削る場合は、平らな定盤となる
 物の上でサンドペーパーを敷いて下面を削る。

 この時に、画像の様に前後をはみ出させる様に
 削ると下面を平面もしくは僅かに真ん中を多く削
 り、アーチ状に削る事が出来ます。

 そうしておけば、サドルとブリッジがより密着する
 ことになります。
  サンドペーパーの上で力を掛けて動かすと・・・
 どうしても押される方の先端部分へ圧力が掛かり
 過ぎ易いので、赤いラインの様な削られ方になり
 易いのです。

  ですから、この様に前後を少しサンドペーパー
 からはみ出させて削るのです。
 そうすれば、端の部分よりも真ん中の部分の方が
 削られる量が多くなりバランスが取れるのです。

  これは、私が在籍していた「東海楽器」流の作業
 の仕方です。
 作業が完了したら、サドルをブリッジにはめ込ん
 で、調弦をして再チェックです。

  これらの作業を行なうのですが・・・くれぐれも「削り過ぎ」にならないように!
 
  高過ぎるのなら削り直す事も出来ますが、低過ぎるとサドルを交換しなければならなくなります?
 ビンテージ・ギター等でしたらサドル用の材料自体が、入手不可能になっている場合があります。
 (大きな象牙材だとか、70年代のマーティンのミカルタ材等)

  その様な場合は、念のためにオリジナル部品は保管しておき、新しくサドルを作り直した方が良いかも
 知れません。
 
  比較的に簡単な?作業でもありますので? 工作好きの方はトライしてみては・・・?

  ただし・・・弦高が高くて弾き難いと言う時は・・・ナット側に問題が有る時もあるので注意が必要です?

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