二輪車用ヘルメットの考察 1


 原動機付自転車(以下、原付)や自動二輪車に乗車する時は、乗車用ヘルメットをかぶらなければ、乗車することが出来ないと、道路交通法で規定されています。

 まっ、私は道路交通法で規定が無くても、必ずかぶりますが・・・

ですが・・・実際の道路上では、その大切なヘルメットを非常にいい加減な考えで、バイクに乗っている方が大勢みられます?

 安全運転を指導するはずの『教習指導員』の中にも、このヘルメットへの考えが「非常に甘い」考えの方が見られて残念です!

 今回は・・・その大切な「乗車用ヘルメット」について考えてみましょう!!!

 そもそも、何故に乗車用ヘルメットをかぶる必要があるのか?
我々、人間の祖先が地球上に現れたのが・・・原人が60万年前、新人(現在の人間の直接の祖先)が20万年前と言われていますが、元々人間は「裸」で生きていました。寒い時期には、毛皮などを被って暖を取っていたらしいですが、基本的には裸で生活する生き物です。
 しかし、生き物の体には必ず「急所」と言われる弱い所があるものですが・・・我々人間は貧弱な保護能力しかない体を、「知恵」でガードする事によって自然界で生きて来ました。ですが・・・知恵でのガードでは、どうしようもない部分も存在するのです。

 
それが、我々人間の体の中でも最も重要な『脳』なのです!

脳は体の全てを、司っていると言える重要な部分です。その重要な脳は、非常に弱い部分でもあるので、頭蓋骨と言う非常に丈夫な骨で覆われているのです!

 つまり、裸で生きている人間が、自分自身の「歩く速さ」(人間の基本的な速さ)の中ですら、丈夫なヘルメット(頭蓋骨)で守らなければいけない場所と言う事なのです!!!

 人間の脳は、高さ40cm位から落ちる衝撃でも場合によっては死に至る場合が有るそうです?
 (事実、ベッドから転落して亡くなられる方が、年間に何人もおられるそうです!)

 それが、人間が歩く速さの何十倍にもなる速さを出す事が出来るバイクに乗るとしたら・・・無防備で良いはずがないのです???

 人間が歩く速さは、時速4km位です。バイクで高速道路を時速80kmで走るとなると、速度は20倍、運動エネルギーは速度の二乗に比例するので、400倍にもなるのです。時速40kmでも運動エネルギーは、歩く速さの100倍です。

 この様に考えた時に、あなたは乗車用ヘルメット無しでバイクに乗る気持ちになれますか?

 なれないですよね? 少なくとも私は、ヘルメット無しではバイクには、怖くて乗れません!
しかし、この乗車用ヘルメットに対して、我々人間は非常にいい加減な扱いをしてきました。

 バイクがこの世に生まれたのは・・・最初が1860年代で、実用的なバイクが走り始めたのが1900年代の初頭です。
日本でも1900年代に入ってから走り始めた様なのですが、乗車用ヘルメットが使われ始めたのが・・・なんと、1950年代になってからです!!!(戦時中は軍隊では、鉄兜(ヘルメット)をかぶっていましたが、これは違う理由です)
 最初は、「レース用」として使われ始めました。1965年に高速道路での使用が法令で決まりました。(ただし、罰則規定無し!つまり、実質的には規制無し、高速道路で、ですよ!)1972年に、速度規制が時速40kmを超える道路において使用が法令で決まりました(この時も、罰則規定無し)。1972年に自動二輪車に対しての着用義務が法令で決まりました(罰則規定有り)。この時に初めて、法令での着用義務が出来たのです。
日本に自動二輪車が走り始めてから、70年もたってからですよ!!!
 ですが、原付は着用義務がありませんでした!原付に着用義務が法令で出来たのは、1986年になってからです。

 この様に、バイク用乗車ヘルメットは非常にいい加減な扱いを受けてきたのですが・・・その名残でしょうか?現在でも非常にいい加減に扱われております!

 それでは、実際のヘルメットはどの様な物なのでしょうか?


 これは1950年代のオートバイレースの画像です。
                                  
ヘルメットが使われ始めた頃は、こんな感じの物でした。

 でも・・・これって、今でも見かけませんか?
 そう! このタイプですよね?(通称、オワン型)

 実は、このタイプは・・・ごく初期のヘルメットのスタイルなのです!
 こんなヘルメットは、一時期まったく見かけなかったのですが・・・何故に今でも使われているかと言うと・・・
 

80年代の中頃から、「バイクブーム」がありまして・・・各メーカーは、今なんかより遥かに沢山のバイクを世の中に送り出していたのですが・・・最新鋭のバイクに世の中は飽きてきて・・・先祖帰りで「レトロ」なバイクが、はやり始めた時に、ヤマハの原付スクーター「ビーノ」のCMに『パフィー』が起用されたのです。(90年代の終わり頃)
 彼女達の音楽自体が60〜70年代の『音』でして・・・レトロな雰囲気のヤマハ・ビーノのキャラクターとしては、丁度良かったのですね!
 そして、彼女達がCMの中でかぶっていたレトロな雰囲気のヘルメットが・・・女の子達に『カワイイ』と思われたのでしょうか? それ以降に、爆発的に被っている人を見かけるようになりました。
 ですから、このタイプのヘルメットが「復活」してしまったのは・・・『パフィー』の影響では?と、私は考えております?

 しかし、安全面から見ると・・・まったく『ダメ』と思います!

 何故かと言うと・・・このタイプのヘルメットがガード出来るのは、人間の頭蓋骨と同じ部分だけなのです。ですから、「歩く速さ」の中では良いかもしれませんが・・・バイクの速さの中では?

 例えば、「顔」は? また、「側頭部」や「後頭部」は? どうなのでしょう?

 と、言うわけで、次に登場したのが・・・

 このタイプ・・・通称「ジェットヘル」です。

 このタイプは、50年代の中頃から使われていた様なのですが・・・確かに、オワン型よりも安全性は高そうですね?
 私も、バイクに乗り始めた頃は、このタイプでした。

 80年代の初めごろまで、主流のヘルメットでしたね?
 (特に、オフロードバイクででは!)


 でも、このタイプも安全面から考えると・・・どうでしょう?

顔の部分の防御が・・・もう一つですよね?  ま〜人間は、顔の部分が急所である事は・・・体がよ〜く解っておりますから、本能的に守りますから・・・滅多なことでは、ぶつけないはずなのですが、バイクでの転倒、ましてや衝突事故などになると、体が本能的に守ろうとしても守りきれるものではありません!

 そこで、「顔」の安全性まで考慮されたヘルメットの登場です!

 それが、通称「フルフェイス」タイプです!

 これなら、「顔」をガード出来ますね!

 このタイプになって初めて、人間の体の中でも特に重要な「頭部」を、しっかりとガード出来るようになったと言えます。

 しかし、このタイプに対して批判的な意見を言う方がおられます?

「視界が狭い」、「音が聞こえにくい」、「首への負担が大きい」などなどです。

 ですが・・・これに対しては・・・まず、「視野」ですが、上下左右のどの方向に対しても十分な視野は確保されております! ましてや、元々人間の目が正確に物を見れるのは、顔の真正面だけです。端っこの方の視野を使って、物を見ることは通常ではやりません!ですから、「フルフェイスタイプ」は視野が狭いと言う意見は、まったくもって「ナンセンス」な意見です!!!

 次に、「音が聞こえにくい」と言う意見ですが・・・これは確かにあるかも知れません?
しかし、会話や運転に支障が有る様なものではありません!運転などに必要な音が聞き取れる様には作らないといけないと、JIS規格などで決まっております。
 ただ、運転中などに会話をする事が考えられる職種では、耳が出るタイプのヘルメットを使われている場合があります。(郵便屋さんや、パトロールの警察官等。ただし、「白バイ」の警察官は、ジェットタイプ、またはフルフェイスタイプを使われています。)

 もう一つ、「首への負担が大きい」ですが・・・確かに、顔の部分の重量の増加があるので、首への負担が有る様に思われるかもしれませんが、首への負担は重量の多さもあるかもしれませんが、それよりも「頭部へのフィット感」の方が大きいと思われます。それと、「空気抵抗」ですね!

 早い速度での走行では、この「空気抵抗」が非常に負担になりますが・・・「空気抵抗」を減少させるには、全体の空気の流れをコントロールし易い「フルフェイス」タイプの方が、他のタイプよりも良いと思われます。 特に最近のヘルメットは、そのあたりの設計が非常に良くなっております。


 上のタイプのフルフェイス・ヘルメットと見比べて見てください。 明らかに空気抵抗が少なそうですね?

 フルフェイスタイプのヘルメットは、元々はオンロードバイク用に開発された様ですが・・・

その安全性の高さからか、オフロードバイク用も開発されました。


 オフロード用のフルフェイスタイプのヘルメットです。

オフロード用には、帽子の「つば」の様な「ひさし」が付くのですが・・・これは、前を走るバイクが巻き上げる土砂や小石が顔を直撃するのを防止する効果があります。

 そして、オフロード走行には、「ゴーグル」を着用します。
それは、目に砂埃などが入るのを防ぐためです。
 実際のオフロード・レースでは、物凄い砂埃の中を走行するのが普通です!
 しかし、いちいちゴーグルを着用するのは面倒なので、街乗り用には「シールド」が付くタイプが、以前から流行りです。

 私も、通勤にはこのタイプを使用しています。

上の3つのタイプが、私のお勧めのタイプです!!

上の3種類は、ヘルメットメーカーの大御所「Arai」のヘルメットです。
国産では、他に「Shoei」も有名です。海外メーカーでは、「AGV」や「BELL」などが有名です。

 私は、「アライ」と「ショウエイ」のどちらも使って来ましたが・・・スタイルは「ショウエイ」が好きですが、内容では「アライ」が好きです。

 どちらのメーカーの製品も、今現在は内装が取り外せて、いくつかのサイズが用意されているので、自分の頭や顔の形に合わせて、よりフィットさせる事が出来るようになっております。

非常に良い製品が多いですが、お値段も結構高いです。少なくとも、良い製品なら3万円以上、4、5万円と言う結構なお値段ですが、自分の命を守る大切な装備です。

 是非とも良いヘルメットを使ってみてください!

 いい加減な「安物」は使えなくなりますよ?

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